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Writer's pictureRafu Shimpo

沖縄県人会:800人で大ピクニック、世代を超えて沖縄スピリットを分かち合う


芝生を駆け巡り子どもたちと戯れる金武(きん)町伝統の獅子舞

芝生を駆け巡り子どもたちと戯れる金武(きん)町伝統の獅子舞

 晴天に恵まれた12日、北米沖縄県人会(國吉信義会長)は毎年恒例のサマーピクニックをサウスエルモンテ市のウィティアナロウ・レクリエーションパークで開催した。今年は昨年より200人ほど多い800人が大集合。若手メンバーの活躍も目立ち、世代を超えて集まった会員たちは沖縄伝統の民謡や舞踊、盆踊り、食事やゲームなどを楽しみながら沖縄スピリットを分かち合い、夏のひとときを楽しんだ。【中西奈緒、写真も】

◎ロサンゼルスの公園が沖縄一色に


琉球國祭り太鼓、ロサンゼルス支部のメンバーによりダイナミックな踊り

琉球國祭り太鼓、ロサンゼルス支部のメンバーによりダイナミックな踊り



沖縄からのゲスト、バンジョー・アイさん

沖縄からのゲスト、バンジョー・アイさん

 「はいさい、ぐすーよー、ちゃーうがなびら!」(こんにちは、みなさん、お元気ですかー!)と、國吉会長の元気な沖縄弁の掛け声とともにピクニックがスタート。「どの世代でも楽しめるピクニックになっています。最後までゆっくり楽しんで行ってください」などと英語であいさつ。そして、何日もかけて準備をしてくれた、たくさんのボランティアスタッフの人たちに感謝の言葉を送った。  ステージが始まるないなや、会場は沖縄の世界一色に。沖縄弁クラスのメンバーによる歌や、芸能部による琉球舞踊、若者に人気のダイナミックな琉球國祭り太鼓などが次々と披露される。沖縄からはシンガーソングライターのバンジョー・アイさんが招かれ、楽器のバンジョーとのびやかな歌声で会場をつつんだ。

◎今年の目玉—金武(きん)町伝統の獅子舞


子どもたちとじゃれ合って寝ころぶ、金武(きん)町伝統の獅子舞

子どもたちとじゃれ合って寝ころぶ、金武(きん)町伝統の獅子舞

 今年のもう一つの目玉は、沖縄県北部にある金武(きん)町伝統の獅子舞の演技。これは今まで北米金武町人会でのみ披露されてきたもので、沖縄県人会ピクニックでは初めてのお披露目となった。この獅子は金武町人会長で沖縄県人会の会員でもある仲田均(62)さんが町から譲りうけたもの。獅子の毛が麻でできているのが特徴だという。  8年間仲田さん自らがこの獅子の中に入って踊ってきたが、体力的にもきつくなったということで、今回からその役目を琉球國祭り太鼓の若手メンバーに譲って指導を開始。獅子はステージの上を激しく舞うだけでなく、芝生におりて子どもたちを追い掛け回したり、じゃれあったりして会場を大いに湧かせた。指導をした仲田さんは「実は、今年は5回しか練習する時間がなくて、ステージの上だけで演技を見せるには技が足りなかった。だから芝生に降りて参加者の中に飛び込む場面をつくった訳だけれど、結果的にとても盛り上がって良かった」とほっとした様子だった。

◎将来期待の星に奨学金を授与  ピクニック中盤には、恒例の奨学金授与式が行われた。今年はソラ・カイムさん=サイプレス高校卒・カリフォルニア州立大学ポリテクニック大学ポノナ校(ホスピタリティマネジメント専攻)、リアナ・アノットさん=ビショップアマット高校卒・カリフォルニア州立大学フルトン校(児童発達専攻)、ブリー・ハナさん=北トーレンス高校卒・UCアーバイン(生体医工学専攻)、ブリアン・カキハラさん=カリフォルニア高校卒・アズサ太平洋大学(医療関連専攻)、コリー・チャングさん=グレンA・ウィルソン高校卒・UCサンタバーバラ(保険数理学専攻)の5人が選ばれ、奨学金を受け取った。

◎ソーシャルメディアを使いこなす若手メンバー  例年を大きく上回る人が参加した今年のピクニックについて「若い世代を引き付けることができるように、会のホームページやフェイスブックを充実させて、こまめにイベントの告知をしてきたのが良かったのかもしれない」と國吉会長。当日も、若手のスタッフが早朝の準備の様子や、踊りなどの催しを動画・写真ともスマートフォンなどで撮影し、随時フェイスブックにアップ。あたかもライブリポートのようで、参加できなかった会員にも当日の様子を伝える徹底ぶりだった。

◎北米沖縄県人会が見つめる先には


盆踊りを楽しむ、北米沖縄県人会の國吉信義会長

盆踊りを楽しむ、北米沖縄県人会の國吉信義会長

 盛大に終わったピクニックの後、國吉会長は今年が戦後70年ということも踏まえながら、沖縄県人会がこれからどういう存在でありたいか熱く語ってくれた。 「私たちは自分のことをオキナワン・アメリカンと思っている。沖縄、日本、アメリカの3つのアイデンティティーを持っているからこそ沖縄人、日本人、アメリカ人社会に貢献できること、伝えられることがあると信じている。それがこの県人会の活動。沖縄県人会は伝統の踊りとか芸能の活動がとても充実しているから、その文化の継承や発展が主な活動だと思われることが多い。しかし、もちろん、沖縄には戦争の歴史やそれにともなう現在進行形の基地の問題もあって、それを若い世代にどう伝えていくか考え、それを実行に移していくことも大切な役割。今年は戦後70年ということで、先月、沖縄戦の慰霊の日の頃に勉強会を開いた。沖縄とスカイプでつないで、前沖縄県知事の大田昌秀(90)に講演をしてもらったり、県人会メンバーの沖縄戦経験者たちに話を聞いた。これは、今回のピクニックでもリーダーとして活躍した若手メンバー、ジョーイ・カミヤくん(29)が企画したものでフェイスブックなどで呼びかけて80人くらいが集まった。これからはこういった勉強会のシリーズを、色んな専門家を呼んで、3か月に1回はやっていきたいと思っている。それが会長としての私の役目だと思っている」

◎取材後記  若いメンバーの活躍やイベント参加者が目立つ北米沖縄県人会。未来をつねに見据え、伝統芸能や歴史などの継承にも積極的に取り組んでいる。近年始めた慰霊の日の勉強会には当初「県人会に政治的な要素を持ち込むな」と反対の声もあったのだという。しかし、戦争経験者が90歳を超えるいま、当時の話を直接聞けるチャンスは残り少ない。体験談を後世に語り伝えていくためにも、若手メンバーが率先して会を運営することには大きな意義がある。北米沖縄県人会、そして、その若手メンバーの活躍にこれからも期待したい。


左から奨学金受賞者のカイムさん、アノットさん、ハナさん、カキハラさん、チャングさん

左から奨学金受賞者のカイムさん、アノットさん、ハナさん、カキハラさん、チャングさん


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