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Writer's pictureRafu Shimpo

災害情報は母国語でも

 命や生活に関わる災害情報を多言語で発信する大切さをあらためて痛感したのは、5年前の東日本大震災の取材でのことだった。  被災地には日本人だけでなく、外国から来た人たちも多く暮らしていた。テレビやラジオ、行政などからの情報は日本語なので、どうしていいか分からずとても不安になったり、母国から逆発信されてくる間違った情報でパニックになったりしたという話を聞いた。  普段日本語で生活していても、その言語能力は移住した年齢やその後の生活環境によって、それぞれ違いがあるもの。いざという時に母国語で情報が得られることが、いかに安心につながるかという現実をかいま見た。  震災後、国際交流センターなどが中心となり各地でさまざまな取り組みが行われている。多言語でのガイドブックやビデオの作成、防災訓練の実施。海外からの旅行客も利用できる携帯のアプリなどもある。  国籍を問わず、みなが情報を共有することは地域全体にとってもメリットになる。それは、誰もが「情報弱者」「災害弱者」にならないことで、いざというとき互いに助け合うことができるからだ。  ここ多民族社会ロサンゼルスはどうだろう。いつ地震などの大災害が起きてもおかしくない地域だ。よく探すと、郡や市が準備する多言語で書かれた対策資料は存在する。例えば「Emergency Survival Guide」はスペイン語、韓国語、中国語など10言語以上に翻訳されているが(日本語はない)、そもそも資料を探し出すのは容易ではない。  アメリカは日本とは違い「自分の命は自分で守る」という考えが強いからか、「命を守る情報にたどり着くのはあなたの努力と興味次第」と試されているようで、行政の対応に疑問を感じる。  先日の日系団体が主催した震災5周年の追悼式では、肝心のロサンゼルスの防災対策の現状やパネルディスカッションは英語で行われ、資料も英語版が少々片隅に置かれている程度だった。参加者の顔ぶれを見ると日系人と日本人が中心。日本語の資料や通訳が必要だった人もいたはず。  ここはアメリカ、英語の国。だが、せめて、命や生活に関わる災害情報は日本語でも発信されるべきではないだろうか。【中西奈緒】

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