爽やかな42歳
3カ月前に手に入れたスマホを何とか自分に必要な範囲で使えるようになった。ヨチヨチ歩きのレベルである。 このスマホという呼び名がどうも引っ掛かる。スマートフォーンの略なら当然スマフォと言うべきなのに、突然フォがホにかわるのが気に入らない。 まあ理屈はともかく、スマホの画面を不器用に開いていたところ、知り合いのドワイト君のブログに出会った。 長年合気道を続けている彼が、42歳の誕生日を道場で祝い、師範や仲間から合計42回、畳に投げてもらったという話である。 動画が付いていたので開いてみると、入れ替わり立ち代り仲間や師範に投げられては立ち上がり、立ち上がっては新しい相手を迎えるドワイト君は、42を数えたところで、袴の裾を捌いて座り直し、投げてくれた師範や仲間に深々と頭を下げてお辞儀をした。 すばらしい誕生日だ。 まず彼がすでに42歳になっていたことに驚いたのだが、日系四世の彼に初めて出会ったのは前の職場にいた頃で、思えば20年も前のこと、当然ながら時の流れの速さに驚かされる。 「ハワイのおじいさんが亡くなって、お葬式に行くのですが、葬儀の後のお礼を日本語でやりたいので手伝ってください」ということだった。葬儀から帰った彼はちょっと興奮したようすで、「おかげで親戚からも上手にあいさつが出来たとほめられました」と報告に来てくれた。 コミュニティーセンターの施設をグループのミーティングなどで使うときも、必ず用紙を提出し、ミーティングが済めば一週間以内にきちんと規定の使用料を支払いに来る。 一般的に、ついおろそかになりがちなことがきちんとできるこの律義な彼は、去年は可愛い男の子に恵まれ既に父親になっているというのに、私の中で未だに初対面のときの大学生のイメージのままである。 さて42歳といえば男の大厄、気をつけるように言ったほうがいいのかな。いや、言わないほうが良いに決まっている。こんなに爽やかな42歳に厄がつけ入る隙もない。だいいち、中国の陰陽道(おんみょうどう)の説明から始めるだけでも大変なことなのだから…。【川口加代子】
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