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Writer's pictureRafu Shimpo

私は「カフェ中」

 アル中にヤク中、ギャンブル中毒。中毒症状はそう簡単には抜け出せない。その気持ちがよくわかる気がする。だって私は「カフェ中毒」なのだ。単にコーヒーが好きなのか、毎日行きたくなるくらいカフェの雰囲気が好きなのか、自分でもよく分からない。  羅府新報から歩いて数分のアートディストリクトに、朝6時からやっている店がある。出勤前にこもって朝イチが締め切りの原稿をよく仕上げたものだ。大学時代はコリアンタウンのカフェをハシゴしてリポートを書いていた。  リトル東京だけでなく、ダウンタウンやロスフェリス、シルバーレイク、ハリウッドなど、あちこちを巡っては居心地のいいお気に入りのお店を探し求めた。  店選びの条件はこんな感じだ。飲み物がそこそこおいしい、長居ができて席数が多い、テーブルと椅子がちょうどいい高さでコンセントがある、適度なボリュームの音楽、清潔感がある、などなど。  一体なんでなのか、家では全く筆が進まない。なのにカフェだと不思議と文章が思い浮かぶ。居心地も良くって驚くほど集中力が増すのだ。  日本に帰ってもこの「カフェ中毒」から抜け出せない。しかもアパートは、いまや東京で最もホットなカフェ文化の拠点、清澄白河周辺にあるのだ。  カリフォルニア発祥のブルーボトルコーヒーが2015年に日本1号店をここにオープンしてから、急激にカフェブームが起きている。古い建物を改築したり、自然とマッチした店構えにしたり、新規参入が止まらない。  週末はこのエリアのカフェを紹介した「カフェ本」を手に付近を散策。新聞や本を読むのも、仕事の準備をするのも、もちろんこのコラムも、その本で紹介された店で作業している。  どうしてカフェに行くのだろう。誰かと話をするわけではないけれど、知らない人たちといることで、自分も大きな社会の一員であると実感したり、一緒に何かを頑張っているという気持ちになったり。カフェ中毒なのではなくて、自分を遠く離れたところから客観的に見ていたいのかもしれない。  さあ、明日は土曜日。どのカフェに行こうか。今夜も例のカフェ本を手に取ってしまった。【中西奈緒】

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