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Writer's pictureRafu Shimpo

英国の母の日

 前日からの雨が上がり、道路の所々に水溜まりの残る石畳の道が続く舗道を抜け、典型的なヨーロッパのイメージのどんよりと曇る空の下、テムズ川沿いを散策してみました。ロンドン橋から遠くない場所に掛けられた重厚感あるタワーブリッジを望む公園には、巨大な白いカーネーションで作られたオブジェが飾られており、花を求める多くの女性たちで賑わっていました。  マーケットでは、3月なのに母の日の関連商品が陳列されていました。ずいぶんと早くから母の日商戦が始まるのだなと思っていたら、今年の英国では3月の第2日曜日が母の日になるそうで、世界共通だと思っていた母の日が、国によって違うとは驚きでした。英国やスコットランドでの母の日はイースターから数えて設定され、毎年日にちが移動するのだそうです。そうなると、日本や米国から届く母親への贈り物やメッセージカードと、英国から届くものでは時期が2カ月もずれてしまうことになるので、受け取る母親も混乱しそうです。  グレート・ブリテン島周辺の島々では母の日をマザーズ・デーではなく、マザリング・サンデーと呼んでいるそうです。昔は遠方に出稼ぎに行った子供たちが、母親の元に休暇で帰省する事が許されたのがマザリング・サンデーだったということから、ひときわ大切にされた日となりました。母=教会という意味もあるそうで、単なる母の日というよりも、母親の愛情を子供に示す事ができることを感謝し、祈るという意味合いが込められた深い名称であることから、この地方独自の文化や歴史を感じることができる発見でした。  英国でも日本同様にカーネーションが贈られる事が多いようですが、何故に花は同じで日にちが英国と日本で変わってしまったのかと調べてみました。日本での母の日は昭和の初期に入ってきており、元々当時の皇后陛下の誕生日である3月6日を母の日としていたのですが、戦後天皇崇拝を薄めるためか、米国の影響が強くなったせいか、母の日が米国と同じ5月に移動したそうです。われわれが忠実に引き継いでいるように思える文化も、歴史と共に少しずつ薄まったり変化が加わるものなのだと感じました。【朝倉巨瑞】

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