藤井六段の師匠
中学生棋士の藤井聡太六段が今月、大阪で開催された第68回王将戦の予選で師匠の杉本昌隆七段と初の公式戦の師弟対局で勝利した。師匠に恩返ししたことになる。 藤井少年の強さは素晴らしく対局後の談話も中学生離れして実に立派で、もう驚き慣れた?が、昨年の藤井フィーバーの時と同じく杉本師匠の、今回は破れた後の言葉の数々ににじむ人柄にまたも感銘した。去年7月も本欄に「藤井四段の師匠」の題で書いたが今回も再び。 藤井六段15歳、杉本七段49歳。二人は控え室であいさつを交したが、対局では目も合わさず勝負に没入した。話題の師弟対決とあって多勢の報道陣に囲まれ午前からの対局は昼過ぎに同じ局面が4回繰り返される「千日手」となって差し直しとなる。差し直し対局は午後6時過ぎ111手で杉本七段が投了、藤井六段勝利となった。 穏やかな笑顔の杉本七段の談話「今日の一日は自分の中では素晴らしいものだと思いました。藤井六段にお礼を言いたいと思います」なかなか言える言葉ではない。立派な人間性をうかがわせる師匠の言葉。亡き師匠の扇子を持参した杉本七段は「私が19の時に師匠が亡くなり、当時自分はプロではなかったので師匠との公式戦は叶わなかった。形を変えて弟子と公式戦対局ができて幸せだ。今日はいろいろな人への感謝の気持ちがこみ上げて最初の一手に時間がかかってしまった」と、ここは感慨深く声をつまらせて語った由。 去年、四段当時29連勝の新記録で日本中を熱くさせた藤井少年は、半年前に五段に昇進し、さらに先月、朝日杯将棋オープン戦で永世七冠の羽生竜王らを破って優勝し六段に昇進したばかり。先輩棋士が皆「恐るべき強さ」と舌を巻く。現役最年少棋士だが、次々と歴史を塗り替える快進撃を続けている。しっかりした人間性でこれからどこまで強くなるのか。 仲良し師弟の二人は対戦後一緒に新幹線で名古屋に帰った。車内の速報電子版に藤井六段勝利と何度も流れて二人笑って見ていたそうだ。「公式対局は格別でいつかまた対戦したい。藤井みたいな弟子を持てて本当に幸せだ」と、なんといい師匠か。微笑ましい師弟関係。この師にしてこの弟子あり。【半田俊夫】
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