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Writer's pictureRafu Shimpo

親友からの誘惑…

 「PRに転職したら?」とアメリカ人の親友はしきりすすめる。ありがたいのか、ありがた迷惑なのか、私のために求人情報を見つけては送ってくる。興味を示さないでいると「将来のことをちゃんと考えているのか」という。  彼女はPR(Public Relations)のスペシャリスト、私はリポーター。互いにそれなりの社会人経験を積んで、同じ大学院を卒業した。彼女は長年の実績を生かし、ここ3カ月で3万ドルを稼ぎ出した。同じ「コミュニケーション」の仕事でも、賃金・労働時間・ビザの問題にぶつかる私の姿は、彼女の目には不憫(ふびん)に映るようだ。  そんな時、昨年のピュリツァー賞をめぐるニュースを思い出した。ジャーナリズムの最高峰に選ばれたリポーター2人が、受賞を待たずしてPR業界に転職していた。「暮らして行くのが大変」「将来が心配」という切実な理由でのことだったという。確かに、取材先で知り合うPRの人たちで、もともとリポーターだったという人は決して珍しくはない。  2014年に発表されたピューリサーチセンターの調査結果はこの現状を如実に表している。2013年の時点でPR職とリポーター職の年収ギャップはおよそ2万ドル。PR職の需要はこの10年間うなぎのぼりで、リポーター職の5倍になるという。  その主な理由はやはりデジタル技術の発達。企業やさまざまな団体はいまや「早く、簡単に、直接的に」人々に伝えたい情報を伝えることができる。それをPRのプロたちが全面的にサポートするのだ。  しかし、ここには危うい現状もある。2010年に出版された「The Death and Life of American Journalism」では「編集スタッフが減ることで、ニュースメディアがプレスリリース(報道関係者に対する発表)に書かれている内容をきちんと調べたり、反論したりすることができなくなる」と警鐘を鳴らしている。  いまや既存のニュースメディアは生き残りが大変だ。しかし「社会に問いかけ続ける」その役割は変わらず大きいはず。今週、アカデミー賞の作品賞に「スポットライト」が選ばれた。新聞社の調査報道がテーマだ。現状への危機感がこの作品を生み出し、賞へと導いたのかもしれない。【中西奈緒】

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