観水流米国錦友吟詩会:4団体合同で秋季大会
竹之下観水三代目宗家(左から3人目)から免状が授与された今年の昇格者。左から前田龍水さん、佐藤溟水さん、(右端から)浜野好堂さん、池田楓水さん、尾花香水さん
観水流米国錦友吟詩会は11日、トーレンスにあるホリデイ・イン・トーレンスで南加地区秋季大会を開催した。およそ60人の吟士が日頃の練習の成果を発揮。大会は南加地区で活動する長唄の「みのり会」、落語の「伊勢や赤福」、津軽三味線の「佐々木光露会」と4団体合同で行われ、日本の伝統芸能が共演した。
吟詠大会は入会3年未満の会員を対象とした第1部、入会4年目以降の第2部、指導者の第3部と順に行われた。
初代宗家から直々に詩吟の神髄を教わり、今もその教えを守り抜く竹之下観水三代目宗家は、「『詩は歌うのではなく吟じるのだ』と初代宗家から教わりました。詩の本当の意味を理解し、作者になったつもりで吟じることの大切さを今も生徒たちに伝えています」と話す。
梁田蛻巌作の「秋夕泛琵琶湖」を披露した同会最年少の藤岡桜堂さん
同会最年少の藤岡桜堂さん(32)は詩吟を始めて4年目。始めたきっかけは知人からの誘いだった。「日本に一時帰国した際、親族の前で詩吟を披露する機会があり、とても反応が良かったのです。それ以降真剣に習い始めました」
以前から歴史が好きだったという藤岡さんは、詩吟を通して歴史が学べること、そして今まで知らなかった漢詩も学べることが魅力だと話す。「在米9年目ですが、米国に来てから歴史をさかのぼることへの楽しさが増しました。自分の好きな幕末や戦国時代の詩に出会うと学ぶ意欲も湧いていきます」。学ぶうちに詩を理解し、自分のものにしていく面白さも同時に見いだしていった。
詩吟に興味を持つ若い世代が少ない現状に対し、「過去の歴史があるから今の私たちがある。その歴史を学ぶことに面白さを感じたら、若い世代にもきっと身近な存在になると思います」と力を込めた。
大会では今年の昇格者に竹之下宗家から免状が授与された。浜野好堂さんが「無号」から「堂号」に、佐藤溟水さん、池田楓水さん、尾花香水さんの3人が「堂号」から「水号」に、前田龍水さんが「準師範」から「師範」にそれぞれ昇格した。
「もともと人前に立つのが苦手でしたが、大会で練習の成果を発表するうちに、吟ずることの楽しさに目覚めました」。師範に昇格した前田さんは詩吟を始めて今年で17年目。「趣味らしきものがなかった自分が詩吟と出会えたのも、詩吟という日本文化を育んできた日系社会のおかげ」。今後はさらに普及に努め、同会の運営に協力していきたいと話す。
落語「君よモーツアルトを聞いたか」を披露する「伊勢や赤福」
4団体による大会は2012年から始まり今年で4回目。会員数の減少に直面し、増員を目指して試行錯誤した末、たどり着いたのが他団体との合同企画だった。
「詩吟と聞くと近寄り難いイメージを持つ人が多いかもしれませんが、他の日本文化の団体と行えば、見ている人も楽しく、詩吟も聞きやすくなるかもしれません」と竹之下宗家。狙いは的中し、実際に会員数は増加。合同企画開始時の12年は会員数が49人だったのに対し、今年までに77人にまで増えた。
長唄の「みのり会」は「供奴」と「五郎時致」を、落語の「伊勢や赤福」は「君よモーツアルトを聞いたか」を、津軽三味線の「佐々木光露会」は「りんご節・津軽甚句メドレー」や「津軽願人節」、「津軽あいや節」、「花笠音頭」などをそれぞれ披露し、会場を沸かせた。【吉田純子、写真も】
「供奴」を披露する長唄「みのり会」のメンバー
「花笠音頭」を披露する津軽三味線「佐々木光露会」のメンバー
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