諸都市の人の歩く速さ
若い頃から歩行速度が割と速かったせいか、日本国内や世界の各地を訪れた時にいつもその土地の人々の歩く速さに目が行く。昔、東京で商社勤務の時代に街を歩いて僕より歩くのが速いと思った人は、会社の9歳上の上司ただ一人だった。実に速い人だった。その僕が見て日本国内はどこに行っても東京の人々の歩く速さが一番なのは明白だった。あくまで一般的、平均的な話である。 その僕が米国各地を歩くとどこへ行ってもやはり東京の方が速いと思う。唯一例外がNYのマンハッタンで、ここは東京と同じ位かやや速い感じで僕には心地良かった。ケネディー空港に着いてタクシーで市内に向かい橋を渡り市街に入ると、車の窓から見える人々の動きが自分の感覚にビンビンとビートが合って響き、何とも心地良くなってきた。 世界も随分あちこちに行ったが欧州、中東、南米、アジアで東京やマンハッタンほど速い所は見ない。どこもより人間的な感じとも言えるが。ロンドンの一部は割と速い。アジアでは香港のビジネス繁華街は割と速く映った。 ここLAはというと全般にかなりゆっくりだ。やはり亜熱帯に近い温暖な気候で東岸や中西部とくらべてゆったりした気性のせいだろうか。横断歩道でわざとゆっくり歩いているようにすら見える人も多い。地域性なのだろう。 ところで、近年は東京の歩く速度は昔よりゆっくりになっているとはっきり感じる。高度経済成長も終って久しく、人々の行動形態も変わってきた。今はNYの通行人たちの歩きの方が東京より明らかに速い。 それと日本で若い人々の歩きが非常にゆっくりなのが目につく。 米国に日本から来る若い旅行者も歩き方がゆっくりというか遅く見える。日本人も僕らの時代といろいろな意味で変わって来たのだと思う。歩きの速さで時代の変遷と社会背景、経済の状況、人の考え方、さらには人類学的な考察にまで思いが行くのだ。 さて現在の僕の歩きはあまり速くない。冬のスキーのために特殊な重い靴を履き鍛えているので重くて速く歩けない。独断文でした。【半田俊夫】
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