高校生7人が米国研修:異文化を吸収し大きく成長
ジョン・ミューア中学の生徒と交流した礼文高校の生徒たち
日本最北の離島、北海道礼文島の礼文高校の生徒7人がこのほど訪米し、南北カリフォルニアで約2週間にわたる研修プログラムをこなした。米国人家庭にホームステイし生きた英語を学んだり、中学、高校や企業、各種団体、国立公園など各所を訪問して異文化を吸収し大きく成長した。
同研修は礼文町の「海外交流事業」の一環で、今年で5回目。生徒に同行した小野徹町長によると、約2700人が暮らす礼文町は高齢化、過疎化が進み、同校の生徒数(現在18人)も減少傾向にあるため、同事業で21世紀の国際社会に生きる礼文島の人材を育成し、町の活性化につなげるのが目的。町が生徒の研修費用を全額負担している。
当地の受け入れは、北海道からの生徒のホームステイプログラムで20年の実績を持つ「南加道産子会」で会長を務めた阿岸明子さんが代表を務め、地元の協力を得て毎年面倒を見ている。
南加のプログラムは教育を重視し、生徒は高校、大学、日系企業を訪問し、遠くはサンディエゴまで足を伸ばし海洋学を学んだ。北加では、海に囲まれた礼文の自然とはひと味違ったデスバレー国立公園やレイクタホなどの大自然を満喫した。ドジャースの野球観戦やハリウッドなど市内観光を楽しんだ支部美紀さんは「ビルや建物、道路など、日本で見たことない大きさだった」と、スケールの違いに驚きを隠すことはできなかった面持ちで話した。
バーバンクのジョン・ミュアー中学で開かれた日本や日本文化を紹介するイベント「ジャパン・デー」に参加し、生徒は礼文についてのビデオを披露し、島や学校生活について英語で立派に発表した。各高校では同年代の生徒との写真を撮り合ったりし、交流を楽しんだ。帰国後は、インスタグラムなどで連絡を取り合うという。
高校を訪問し、堀内陸さんは「日本と違い制服はなく私服で、また体格が大きく、年齢は同じくらいなのに大人に見えた。大学のような自由な雰囲気で、生徒が積極的に発言したのが印象的だった」と語った。授業中に、ものを食べたり、先生の許可を得ないで教室から出ることにも驚いたという。
生徒は、ホームステイで出されたピザやハンバーガー、ワッフルなど、礼文ではなかなか食べることはできないというアメリカンフードは「とてもおいしかった」と喜んだ。「でも、やっぱり白いご飯が食べたくなることがある」と口を揃え、日系企業の訪問で出された緑茶に感動したこともあった。
佐藤瑠さんは、ホストファミリーが話すスピードが速すぎて、聴き取ることが難しく「全身を使って意思を伝えた」という。帰国後は「英語をもっと勉強して、頑張って話すことができるようにしたい」と意欲を示した。「一生に一度かもしれないチャンスだったので研修に応募した」という佐々木麻衣さんは、自身は悲観的に考えがちだというが「アメリカ人は明るくて失敗を恐れない感じがした。見習って、考え方を変えたい」と、ポジティブ思考を抱いた。
生徒は帰国後、2週間の研修の成果をまとめて発表し、町の発展に役立てる使命を担う。高木りこさんは「学んだことや楽しかったことを伝えたい。それを読んで、後輩が礼文高校に入学してこのプログラムに参加しようという気になってほしい」と願う。濱谷真帆さんは「日本では学ぶことができないことばかりだった。アメリカで学んだことを生かして自分を高めて将来に役立てたい」と誓った。室矢茜さんは「一生に一度しかないいい経験ができ、視野を広げることができたと思う。将来の仕事や生活に生かしたい」と抱負を述べた。
引率した東憲吾教諭は、生徒について「こちらに着いた時よりも、恥ずかしがらずに自分から話しかけるなど、成長が見られたのがうれしい」と喜んだ。「練習に練習を重ねた」というプレゼンテーションは「聴いた人に誉められて、より自信を付けるようになり、発表するごとに、うまくなった」とたたえた。
今回の研修は第5回を記念してレセプションを開き、招いたホストファミリーを礼文町が表彰した。生徒は、YOSAKOIソーラン節を強く踊り、感謝の気持ちを伝えた。毎年生徒を受け入れ、2年前には礼文町に招待されたドン、ジュディー・ボガードさん夫妻は「礼文から来る子供たちは、英語を学ぼうとする意欲があり、いい子ばかり。これは、生徒の将来と礼文にとって素晴らしいプログラムなので、ずっと続けてほしい。そして、われわれはずっとホストを続けたい」と話した。
小野町長は、研修について「グローバルな観点から、外国から日本を見ることで、これからの日本を引っ張り、ひいては礼文町を率いる人材が育つ」と意義を強調。5年の成果について、1回目の参加者が今年、地元の役所に就職したことと、昨年参加した2人が生徒会の会長と副会長に就いたことを誇り「若いリーダーが生まれている。後に続いてほしい」と願う。当地のそれぞれの生徒の受け入れ先に謝意を表し「これからも、若い生徒を送りたいので、よろしくお願いします」と、継続の意思を示した。
阿岸さんは、今年の研修を振り返り「5回目の節目に町長と町議、教育長、校長が参加し視察してもらった。大切なプログラムを見てもらえ、これからも続けることを希望されたことがうれしい」と喜んだ。生徒については、学校訪問で英語で堂々と発表しまた、YOSAKOIソーラン節を3度踊り大きな拍手を受けたことを評価し「決して受け身ではなく、積極的に行動することで、より自信をつけて一回りも二回りも大きくなったと思う」と語った。子どもたちに向け「島を挙げての、島の未来のためのプログラムなので、礼文島に帰ればアメリカで学んだことや感動した思い出を、島の人とシェアしてほしい」と願った。【永田 潤】
歓迎会でホストファミリーと写真に納まる生徒たち
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