1392人、ギネス世界記録に挑む:うちわ片手に一斉に音頭
ギネス記録樹立に向け、うちわを片手に一斉に「新北海盆歌」を踊る参加者
櫓の上からのウォルター・ニシナカさんのほら貝の音を合図に音頭スタート
バーバンクのジョン・ミューア中学は21日、同校校庭で、滞米中の姉妹校、北海道・礼文高校の生徒11人とともに、うちわを持って音頭「新北海盆歌」を同時に踊るギネスブック世界記録に挑んだ。生徒と職員ら合わせて1392人が心を一つにして5分間踊り切り、固い絆をいっそう強めた。【永田潤、写真も】
同中学は毎夏、礼文高の生徒の訪問に合わせて、書道や茶道、華道、着物の着付け、アニメなどの日本文化を紹介する「ジャパン・デー」を開き、親睦を深めている。イベントは今年で5回目で、初の試みという音頭は、同校で教え、ジャパンデーのコーディネーターを務めるテッド・デバージリス教諭が「姉妹校の絆を強めたい」と発案した。
ギネスブックには、昨年までに2000人が同時に盆踊りを踊った記録があり、さらに今夏4000人近い新記録が日本で樹立されたことを同校は、把握したという。全校生徒は1400人余りのため、記録更新を望むのは難しいと判断。また、浴衣着用も基準が高かったという。そこで、ギネス社と話し合い、違う新しい方法を打ち出した。
練習の成果を発揮し、息を合わせて音頭を踊る生徒たち
LAやバーバンクの住民に参加の協力を頼めば、世界記録更新は可能だったかもしれないが、同教諭は「姉妹の2校で行うことに意義がある」と「うちわを持って、盆踊りにふさわしい衣装を着て、5分間踊る」に切り替え、記録に挑戦した。
音頭の振り付けは、本番2週間前から始まった。日舞の「寿の会」のクリスティーン・イノウエさんがまず、体育教師6人に教え、教師が放課後に生徒に踊り方を伝えた。イノウエさんによると、参加した生徒の誰一人として、音頭を知らなかったという。「リトル東京ダンスクラブ」は、同校からの協力要請を快諾。二世週祭の街頭音頭で使った櫓を組んで、太鼓演奏でも励まし、記録樹立を後押しした。
室内でのジャパンデーのプログラムを終えた生徒が、校庭に現れ、いよいよ本番。うちわを片手に、太鼓奏者の衣装に見立てた出立ちで、鉢巻きを締め、記録達成へ、気合いを入れた。ギネス記録のチャレンジとなると、メディアの関心は高く、チャンネル7やロサンゼルス・タイムズと地元の新聞社が取材に駆けつけ、生徒のモチベーションは高まった。
音頭は、ほら貝を合図に一斉にスタート。教師約50人と保護者が見守る中、参加者は5重、6重の大きな輪を作り踊った。イノウエさんによると、同中学の生徒は、この日まで、練習でしか踊ったことがなく、本番はこれが初めてといい「ハラハラしながら見ていた」という。礼文高の遠藤海生さんは「最初は慣れることができず心配したけど、徐々にしっかりと踊ることができた」と、話したように、生徒は徐々に調子を上げ、息を合わせて踊り、練習の成果を披露した。
櫓を囲み、5、6重の大きな輪を作り、音頭を踊るジョン・ミューア中と礼文高の生徒ら1392人
演奏が止まり、音頭は終了。生徒は、うちわを天高く掲げ、喜びを分かち合った。ギネス社に提出するビデオ撮影のカメラに向けて、うちわを振り、記録達成を猛アピール。最後は参加者全員が正面を向いて、日本流に深々と一礼して、締めくくった。
礼文高の生徒は、この日のために、日本で練習を重ねたという。渡辺リリカさんは「こんな大人数で踊ったのは初めてで、練習とは違う不思議な感じだった。アメリカ人と一緒に踊り、いい経験になった」と述べた。遠藤さんは「とてもいい思い出になった。踊り切って、みんなが盛り上がり喜んでいたので、よかった」と語った。
イノウエさんは「みんな、よく揃って踊ってくれたから、とても、とてもうれしい。1392人が同時に踊ったことは、本当にすごい」と喜んだ。「このビデオを日本の人々に見てもらいたい。アメリカ人がすごいことをした、と関心するだろう」と述べた。
音頭開始前に、参加者に指示を出すテッド・デバージリス教諭
記録を報告する2人の証人の1人は、LA在住の歌舞伎俳優、中村雁京さんが務めた。日本で厳しい修業を積んだ中村さんは、日舞でも坂東拡七郎として当地で弟子を育てている。日本文化の継承者として、生徒が音頭を踊る姿を見て感慨深い面持ちで「中学生がしっかりと、ここまで踊るとはビックリした。集中して踊ってくれたのがうれしい。すごく感動した」と話した。「日本文化にふれ、奥深い日本文化を好きになるきっかけになってほしい」と願った。
グレッグ・ミラー校長は、生徒が踊り終えると、諸手を挙げて歓喜したたえた。「ジャパンデーを催すことにより、レブンと交流しているが、今日のギネスチャレンジで、われわれ姉妹校と、日本とアメリカの両方のいい関係が、いっそう強まった感じがして、うれしい」と喜んだ。両校の姉妹関係は、礼文高の訪米プログラムをコーディネートする阿岸明子さんが取り持ったことを強調し「この素晴らしいイベントを企画し、生徒に一生の思い出を残してくれた、アキコと日系社会の人々に感謝したい」と述べた。
デバージリス教諭は、ギネス挑戦について、昨年訪問した礼文高の生徒が、よさこいソーラン音頭を披露し、その力強さに刺激を受け、何かをしようと思ったといい「生徒とすべての職員、レブンの生徒を巻き込んで、とても苦労が必要な大きなプロジェクトだったが、やったかいがあった」と、充実感をにじませた。生徒が踊り終えた瞬間を「みんなが大喜びしたので、とてもうれしかった。とても思い出深く、われわれにとって歴史的な日となった。参加者みんなが、一生忘れられない思い出になったと思う」と興奮気味に話した。教え子に向け「礼文高校の生徒と一緒に、歴史を作ったことを誇ってほしい」と願った。
ギネス記録の公式認定は申請後、約1カ月かかる見込みで、バーバンクと礼文の生徒は、吉報を待つ。
ギネス社に提出するビデオ撮影用のカメラに向けて、うちわを振り記録達成を猛アピールする生徒たち
踊りを終えて、両手を上げて喜ぶ礼文高の生徒ら。【写真上】左が阿岸明子さん、右がグレッグ・ミラー校長
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