LA市長:最低賃金引き上げ案署名
LA市の最低賃金引き上げ案に署名するエリック・ガーセッティー市長(中央)
ロサンゼルス市のエリック・ガーセッティー市長は13日、向こう5年間で最低賃金を時給15ドルまで引き上げる提案に署名した。380万人の市民が住む同市は、サンフランシスコやシアトルに続き、全米でもっとも最低賃金が高い都市の仲間入りをすることになった。【取材=吉田純子】
同提案は10日に行われたLA市議会の投票ですでに承認が得られており、施行には同市長の署名のみとなっていた。
ガーセッティー市長は市長就任当初から最低賃金の引き上げを公約として掲げていた。署名は、昨年のレイバー・デーに同提案のキャンペーンが始動したサウスロサンゼルスにあるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア公園で行われた。
施行後、同市の最低賃金は従業員数26人以上の大規模企業に関しては、2016年7月から、これまでの時給9ドルから10・50ドルに、17年7月から12ドル、18年7月から13・25ドル、19年7月から14・25ドル、20年7月から15ドルに段階的に引き上げられる。
従業員数が25人以下の小規模企業は、大規模企業より1年遅れて施行され、同じく段階的に引き上げられ、21年には時給15ドルに達する。
同案は、現在最低賃金で働く市民およそ60万人に影響を与えると予測されている。うち20歳以上が97%、30歳以上は60%、有色人種が80%、女性は50%だ。
同市長は「現在同市には低い賃金で働き貧困に苦しむ市民がたくさんいる。同案の施行により、彼らが家族を養い十分な生活用品を買えるようになるだろう」と述べ、市議らが見守る中、署名した。
反対派からは最低賃金の引き上げにより、従業員を解雇する企業も増えるのではないかとの懸念の声もあがっていた。
カリフォルニア大学バークレー校(UCB)のエコノミストの調査結果によると、最低賃金を15・25ドルに設定した場合、同市の労働者数の41・3%にあたるおよそ60万9千人に賃金引き上げが適用される一方、3472人が解雇などで職を失う可能性があるという。
一方、LA地区には従業員数の多い企業が数多くあるが、その多くがLA市内ではないため、実際に大きな影響を受ける大企業は少ないとの見方もある。
全世界の従業員数が18万人を超えるエンターテインメント会社「ウォルト・ディズニー社」も、南カリフォルニア地区に多くの従業員を抱えるが、本社はLA市ではなくバーバンク市にあり、同社が運営するテーマパーク「ディズニーランド」もオレンジ郡アナハイム市にあるため、今回の最低賃金引き上げの対象にはならない。
一方、若者に人気のアパレル会社「Guess(ゲス)」や「アメリカン・アパレル」の本拠地はLA市であるため、最低賃金の引き上げが適用される。
最低賃金の引き上げはLA市だけで実施され、88の非市政化地区を含むLA郡では適用されない。今後企業経営者たちは労働賃金が安い地区にビジネスを移転させる可能性も出てくるとの意見もある。
同市のほか、サンフランシスコやサンディエゴ、シカゴ、シアトルなどの都市でも最低賃金の引き上げは行われている。サンフランシスコでは昨年11月、18年までに最低賃金を時給15ドルまで引き上げる案が承認された。
加州の最低賃金は現在時給9ドルで、連邦は時給7・25ドルとなっている。
署名を終え、LA市議メンバーの(左から)ギルバート・セディーロ氏、ナリー・マルティネス氏、マイク・ボニン氏、ポール・コレッツ氏(右端)らと喜ぶガーセッティー市長(右から2人目)
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